新庄寒山ー6 萩焼茶碗 見込み

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 十三代・新庄寒山の六つ目の萩焼茶碗を上から写しています。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見るこの茶碗は、殆ど乱れのない真円形です。口縁は薄く均一で、何処に口を付けて飲んでも快適です。見込みの底は自然に湾曲していて、茶溜りは特段整形されていません。

 見込みの一番底から少し上がった辺りに、表面が少し荒れた線部分がグルっと一周あるのですが、これは器を重ねて焼いた形跡・目跡かも知れません。ただ、こうした目跡には釉薬が乗っていないのが普通なのですが、この茶碗の場合にはここにも透明釉が乗っているので、目跡ではないかも知れません。

 その他の景色は外側と同じで、静かながらも味わい深いものとなっています。

つづく

新庄寒山ー6 萩焼茶碗 背面と両側面

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 十三代・新庄寒山の六つ目の萩焼茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(窯印側)、三枚目が右側面です。

 釉薬の流れと溜りがない事を除けば、どの面も正面と同じ景色です。本当に殆ど飾り気のない素の萩焼茶碗という感じです。それなのに、否、それだからこそ、ディティールに於ける微妙な変化や動き、そして細かい質感をじっくり味わう事が出来ます。楽焼や唐津焼、或いは他の様々な焼物とは違う、萩焼独自のコアな部分だけを味わっているような気持になれます。

つづく

新庄寒山ー6 萩焼茶碗 正面

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 深川萩の窯元の一つ・新庄助右衛門窯の十三代・新庄寒山(?-1968?)の萩焼茶碗です。十三代・新庄寒山の茶碗を取り上げるのは、これで六つ目です。写真では、高台脇の窯印を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。

 不思議と私の心に刺さる作品が多い十三代・新庄寒山ですが、この茶碗も大変気に入っています。
 窯印を向かって左90°に置くという抹茶茶碗のお約束の向きにすると、ちょうど釉薬の流れと溜りが薄っすらと見える部分が正面に来ます。釉薬に表情が出ているのはここだけで、他は下の化粧土がフラットにそのまま見えています。それだけに退屈な見た目になりそうなものですが、不思議と見ていて飽きない茶碗です。高台は竹の節高台で、高台脇もラフな仕上げになっていて、腰から下の景色としては結構荒々しいです。この荒さが腰から上の静けさと上手くバランスを取って、飽きない景色を作り出しているのでしょう。

 形としては、オーソドックスでバランスの良い椀形のシルエットに、丁寧な轆轤目が残っています。陶土には細かいながらも砂粒が多く混ざっており、ツルツルになり過ぎない自然な表面の仕上がり具合が、眺めても手に持っても心地良いです。

 明るい色の化粧土は全体にかかっていますが、微妙に赤みを帯びた部分もあったりして、何だか色白の女性の肌を見ているような感覚になります。これも見ていてウットリするポイントの一つです。

つづく