鈴木五郎-1 織部茶碗 高台と掻き銘

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 鈴木五郎の織部茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は乱れのある真円で、直径はやや小さいでしょうか。高台内の掘りは浅く、兜巾はありません。全体の左半分に、白釉が流れて溜った跡があり、整え過ぎない高台脇表面の仕上げと相まって、独特な景色を作り出しています。

 陶土は鉄分の少ない百草土だと思われますが、ザクザクしたラフな雰囲気が味わい深いです。

 掻き銘は「五」だと思われます。以前に河本五郎の掻き銘も掲載しましたが、それも「五」でした。しかも、どちらも草書体ベースの掻き銘で、ちょっと形が似ています。このため、うろ覚えの私は、掻き銘だけを見ると、「鈴木」の五郎さんなのか、「河本」の五郎さんなのか分からなくなってしまいます。(笑)

 という事で、鈴木五郎の織部茶碗でした。典型的な織部かと思いきや、そこかしこでお約束から外した造りが大変に面白い茶碗です。既存のルールから離れて自由に創造するというのが、元々の織部が持っている精神性ではないかと私は思っているので、こういう織部が私は好きです。

おわり


P.S. 今年のブログ更新は今回で終了です。また、新年最初の更新は五日を予定しています。皆様、今年も大変お世話になりました。どうぞ良いお年をお迎え下さい。m(__)m

鈴木五郎-1 織部茶碗 見込み

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 鈴木五郎の織部茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 この茶碗を上から見ると、何となく五角形に近い乱れのある真円となっています。口縁は、やや分厚く、3時位置から4時位置辺りで傾斜が付けられています。ですから、そこを飲み口にするのが良いですが、その位置は茶碗を時計回りに90°回してから口を付ける茶道某流派の作法に合っています。

 見込みの底には細かい凸凹があり、茶溜りは不明確です。こういう少しラフな仕上げなので、真っ白な色でも退屈しない景色になっています。3時位置辺りにある緑釉の溜りも良い味わいです。

つづく

鈴木五郎-1 織部茶碗 背面と両側面

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 鈴木五郎の織部茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面、三枚目が右側面(掻き銘側)です。

 背面から右側面にかけて小さめの線画が描かれており、これがメインとなる正面の絵に対するサブの絵になります。織部に限らず一般的な茶碗の場合、サブの絵というのは、背面の真ん中に描かれるのがお約束というものですが、この茶碗ではかなりズレた場所に描かれています。メインとサブの絵を入れるという点ではお約束通りなのですが、描き込む場所は崩しています。

 緑色の釉薬をかけている場所についても、一般的な織部が左右側面の二か所であるのに対して、この茶碗では左右と背面の三か所になっています。しかも、見込みにまで緑色が伸びているのは、右側面と背面だけになっています。

 各面の腰の辺りには箆削りの跡が見て取れます。特に背面にはザックリ抉られた凹みがあります。この削り跡が全体的にシャープなイメージを作り出しており、ぐにゃぐにゃした線画との対比で、独特の雰囲気を醸し出しています。

つづく