
京都の陶芸家・猪飼祐一(1963-)の灰釉彩茶盌です。猪飼祐一の茶碗は、これで二つ目となります。また、前回の同氏の作品も灰釉彩茶盌でした。写真では、高台脇の掻き銘を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。
前に紹介した灰釉彩茶盌を随分気に入ったので、同じ手の茶碗をもう一つ買い足した訳です。今回の灰釉彩茶盌は前回のと比べると少し人工的要素が強い物となっています。
乱れのある轆轤目が残され、少し口の開いた半筒のシルエットに、やや艶消しの白い釉薬がかかっています。正面には正方形の黒い絵が描かれていますが、この正方形は他の場所にも幾つか入っています。また、正方形全体ではなく、その一部だけが描かれている場所もあります。正面左上と左下に見える黒い模様も、正方形の角の部分だけが描かれた箇所です。
白釉の上からは、自然釉と思われる青味がかった釉薬が薄くかかっています。それが流れて溜った個所は青緑色が濃い目に出て、薄い箇所は薄っすらと青色が乗っています。この自然釉が「灰釉」で、その青味の彩りがこの茶碗のポイントになっています。正に「灰釉彩茶盌」という名前通りです。
正方形の絵は、多分鉄絵だと思うのですが、かなり人工的・作為的な絵です。ただ、ナチュラルに擦れていて、適度に人為性を薄めています。これがもし明確な正方形としてクッキリと描かれていたら、全体的に不規則性が取り込まれたシルエットに不釣り合いな雰囲気になっていたでしょう。人為性を出し過ぎないギリギリのラインでまとめられています。
つづく