猪飼祐一-2 灰釉彩茶盌 正面

猪飼祐一02_01

 京都の陶芸家・猪飼祐一(1963-)の灰釉彩茶盌です。猪飼祐一の茶碗は、これで二つ目となります。また、前回の同氏の作品も灰釉彩茶盌でした。写真では、高台脇の掻き銘を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。

 前に紹介した灰釉彩茶盌を随分気に入ったので、同じ手の茶碗をもう一つ買い足した訳です。今回の灰釉彩茶盌は前回のと比べると少し人工的要素が強い物となっています。

 乱れのある轆轤目が残され、少し口の開いた半筒のシルエットに、やや艶消しの白い釉薬がかかっています。正面には正方形の黒い絵が描かれていますが、この正方形は他の場所にも幾つか入っています。また、正方形全体ではなく、その一部だけが描かれている場所もあります。正面左上と左下に見える黒い模様も、正方形の角の部分だけが描かれた箇所です。

 白釉の上からは、自然釉と思われる青味がかった釉薬が薄くかかっています。それが流れて溜った個所は青緑色が濃い目に出て、薄い箇所は薄っすらと青色が乗っています。この自然釉が「灰釉」で、その青味の彩りがこの茶碗のポイントになっています。正に「灰釉彩茶盌」という名前通りです。

 正方形の絵は、多分鉄絵だと思うのですが、かなり人工的・作為的な絵です。ただ、ナチュラルに擦れていて、適度に人為性を薄めています。これがもし明確な正方形としてクッキリと描かれていたら、全体的に不規則性が取り込まれたシルエットに不釣り合いな雰囲気になっていたでしょう。人為性を出し過ぎないギリギリのラインでまとめられています。

つづく

三輪休雪ー1 萩茶碗 高台と窯印

三輪休雪01_06

三輪休雪01_07

 十代・三輪休雪の萩茶碗の高台と窯印です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 切り込みのある切高台は乱れのある真円です。砂粒混じりの陶土という事もあって、この茶碗で最も力強い姿をしています。高台内の削りもザクザクとしており、兜巾も荒々しい姿をしています。この高台内から高台脇にかけて釉薬がかかっていない部分があり、荒い土の雰囲気が良く伝わります。
 全体的には静かで優しい茶碗なのですが、この下から見る景色だけが力強く荒々しい雰囲気になっています。こういうコントラストは、見ていて楽しいものです。

 窯印は、高台の付け根辺りに小さく「休雪」と入っています。パッと見では何処にあるのか分からないくらい小さく控えめです。これが十代・三輪休雪の窯印の特徴です。十一代以降の「休雪」印は、もう少し分かりやすくなって来るイメージです。

 以上、十代・三輪休雪の萩茶碗でした。人気の「休雪白」作品ではありませんが、オーソドックスな萩焼茶碗として完成度の高い作品です。

おわり

三輪休雪ー1 萩茶碗 見込み

三輪休雪01_05

 十代・三輪休雪の萩茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見るこの茶碗は、乱れの少ない真円形です。口縁は薄く均一で、端正な佇まいをしています。薄っすらと残る轆轤目や、砂粒や釉薬の気泡・縮れによる凹凸、釉薬と化粧土の穏やかなムラの優しい表情といった要素は茶碗の外側と同様です。見込みの底はなだらかに湾曲しており、茶溜りは意識的には整形されていません。静かで味わい深い景色です。

 さて、十代・三輪休雪は人間国宝になる訳ですが、次代の十一代・三輪休雪(十代の弟)も人間国宝になります。十一代・三輪休雪の作品は、「休雪白」が更に進化し、所謂「鬼萩」と呼ばれるような、白釉を強く縮れさせた物が多くなります。この「鬼萩」は人気が高く、他の萩焼作家も多く手掛けるようになったりするのですが、それでも十一代以降の三輪休雪のトレードマークと言えるような様式となっています。ただ個人的に、この「鬼萩」の力強く荒々しい姿が、私が萩焼に求める味わいと随分と違っているので、現代陶芸作品として興味深いとは感じるものの、伝統的な「萩焼」としてコレクションに加えるのには多少の抵抗感があります。その点、中古市場に出て来る十代・三輪休雪の作品は、まだ伝統的な萩焼の姿をしている物が多く、その意味で「萩焼旧御用窯の作品を全部揃える」という私のコンセプトに合致しています。私が三輪窯の作品を購入する上で十代・三輪休雪の「休雪白」でないオーソドックスな茶碗を選んだのは、こうした事も要因の一つです。

つづく