
十代・三輪休雪(1895-1981)の萩茶碗です。写真では、切高台の切れ目がイイ感じで見える向きを正面としています。ここを正面とすると、高台脇にある窯印は、向かって右90°の位置に来ます。
言わずと知れた萩焼に於ける最初の人間国宝の作品です。とは言え、十代・三輪休雪が人間国宝に指定されたのは、1967年に隠居して「休和」と号するようになった後の1970年ですから、「休雪」の窯印がある本作品は人間国宝になる前の作品という事になります。
また、十代・三輪休雪と言えば、白い釉薬が美しい「休雪白」の作品が有名ですが、この茶碗はそれではなく、極めてオーソドックスな萩焼の茶碗となっています。
そういう訳で、泣く子も黙る「人間国宝」の作品ではありますが、言うほど高くない価格で中古を落札する事が出来ました。価格としては、例えば岐阜県重要無形文化財であり、志野焼での人気作家・林正太郎の中古のネットオークション落札相場よりも随分と安いくらいです。まぁ、人間国宝が作った作品だからと言って、その作品の全てが国宝級の価格になるという訳ではないという事です。
ただ、考えてみれば、本作品も含めた数々の業績が評価された結果として人間国宝に指定された訳ですから、人間国宝になる前の作品にもそれなりの意味・価値があると私は思っています。実際、この茶碗の萩焼としての完成度はかなり高いと感じます。
適度にバランスの取れた椀形のシルエットに、落ち着きのある萩焼らしい琵琶色の釉景、味わいのある貫入や、景色に動きを与える荒々しい陶土と切高台といった要素が、この茶碗の完成度の高さを物語っています。正に「これぞ萩焼」と言える作品だと思います。
つづく