
今回は西岡小十(1917-2006)の無地唐津をご紹介します。上の写真では向かって左90°に掻き銘を持ってきて、この向きを正面としています。
写真をご覧頂いてお分かりだと思いますが、ボツボツとした斑模様が出ているので、一瞬「斑唐津」のようにも見えますが、掛かっている釉薬が斑唐津の藁灰釉ではなく、普通の唐津焼で使われる土灰釉のようなので、これは普通の無地唐津であろうと思います。
フォルムは適度に整った碗形で、轆轤目が控え目に残っています。また、釉薬には非常に細かい気泡が無数に開いており、そこにボツボツと斑模様が入って、全体として静かで落ち着いた景色になっています。斑模様と気泡が織り成すザラザラと自然なテクスチャーが素敵です。
それと、やはり人為的な何らかの絵が入っていない茶碗は、それだけ人間の作為が希薄になり、偶然に出来上がる景色の割合が高くなるので、私としては好きです。
唐津焼は、萩焼よりも硬く焼き締めると言われていますが、確かにこの茶碗も萩焼より持った感じが硬いです。爪で叩いて出る音も、少し高めの音程になります。この硬い感触は好みが分かれる所だと思うのですが、これはこれで唐津焼の個性なので尊重すべきでしょう。
つづく
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