坂高麗左衛門-1 萩焼茶碗 正面

坂高麗左衛門01_01
 十一世・坂高麗左衛門(1912-1981)の萩焼茶碗です。写真では、釉薬の流れが最も美しいと思われる箇所を正面としています。ここを正面とすると、高台脇の窯印は、ちょうど背面側に来ます。

 萩焼の茶碗をコレクションしていると、やはり坂高麗左衛門の作品は欲しくなります。萩の地に来て萩焼を始めた李勺光と李敬の兄弟の内、弟の李敬の直系の家系が今の坂家で、その坂窯は松本萩として萩藩の最も古い御用窯です。ですから、坂窯は正に萩焼の宗家・本家本元、そういう窯元です。(因みに、兄の李勺光の家系は後に深川三之瀬に移り、半官半民の深川萩の流れを作ります。)(萩藩の御用窯・松本萩は、後に三輪窯と林窯を加えて三窯になります。三輪窯は現存し、二代続けての人間国宝となった三輪休雪の窯元です。)

 十一世・坂高麗左衛門は、坂家に入った婿養子ですから、この人自身に坂家の血が流れている訳ではないのですが、例えば十世・高麗左衛門の作品と写真で比較してみたりすると、やはり作風が何となく似ているような気がしますし、坂窯の伝統を正しく受け継いでいる人だと私は感じます。

 で、この茶碗なのですが、私の坂家に対する先入観が多分に効いていると思うのですが、枯れた中にも非常に上品な味わいのある茶碗だと思います。比較的乱れの少ない碗形のフォルムに、荒めに轆轤目が残り、その上から柔らかい色調の化粧土と釉薬がかけられ、釉薬の縮れが控え目に出ています。カチッとしている訳でもなく、逆にダラッとしている訳でもない、しっかりとした存在感がありながらも、押し付けがましい所がなく、程好い優しさと上品さを兼ね備えた実に美しい茶碗です。釉薬の自然なムラもイイ感じです。

つづく

この記事へのコメント