
今回の茶碗は、四代・高橋楽斎(1925-)の信楽茶碗です。写真では、高台内に偏って刻まれた掻き銘を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。
自然釉と言えるほどの灰はかかっていないので、そういった部分での景色は楽しめませんが、向かって左に灰がかかった事によると思われる黒い部分と、向かって右の素焼きのような明るい色調の部分の両方を、この正面から見る事が出来、また真ん中の程好く焼けた茶色の部分も美しく、その意味でもここを正面とするのが良いのではないかと思います。
全体的には角張ったカチッとした造形ですが、乱れのある轆轤目とか、陶土に多く含まれる長石の砂粒によるザラザラ感とかが、自然な不規則性や偶然性を表していて、味わい深いテクスチャーになっていると思います。口縁部直下に入れられた2本の細い線も、ちょっとモダンでイイ感じです。
四代・楽斎の作品は、滋賀県指定無形文化財保持者であった父=三代・楽斎(1898-1975)や、同じく滋賀県指定無形文化財保持者となった弟の春斎(1927-2011)、或いは当代である五代・楽斎(1954-)の作品と比べると、比較的買いやすい価格で中古品を入手する事が出来るのですが、私の審美眼が足りないからなのか、出来栄えに大きな差はないように思われ、信楽の抹茶茶碗をコレクションに加える上で、とてもありがたい存在です。
つづく
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