猪飼祐一-1 灰釉彩茶盌 見込み

猪飼祐一01_05

 猪飼祐一の灰釉彩茶盌の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見た形は、少し歪みのある真円です。特に9時位置くらいの口縁は外側に広がっていて、ここを飲み口にすると快適です。ただ、そこを飲み口にするという事は、飲む前に茶碗を反時計回りに90°回転させるという事になり、それは時計回りに90°回転させる茶道某流派の作法と真逆になります。これを茶碗の不具合と考えるか、作法の不具合と考えるかは人それぞれでしょう。私は「茶道具」を「茶の道具」と考え、「茶道の具」とは考えていないので、特定の作法には縛られずに、最も快適な飲み口を選びたいと思っています。

 見込みの中には鉄絵で斑点状の模様が入っていて、この写真では分かり難いですが、模様は見込みの背面側に集中しています。そこは正面から見込みを覗いて行った時に最初に目に入る所です。その部分に目を引く絵や模様を入れるのは色絵磁器と同じ手法で、ここでも鉄絵の場所が完全にコントロールされている様子が窺えます。

 その他、茶溜りは適度な大きさと深さを備え、貫入が適度に入った釉景が味わい深いです。

つづく

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