
小川欣二(1926-)の伊羅保茶碗を紹介します。小川欣二の茶碗はこれで五つ目で、同氏の伊羅保茶碗としても二つ目になります。写真では、高台脇の窯印を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。
前回取り上げた伊羅保茶碗とは随分と雰囲気の違う茶碗です。陶土は同じようなのですが、今回のは絵が描かれていませんし、釉薬の発色やかけ方が異なっています。ただ、前のと異なるとは言っても、小川欣二と言えば同じ手の作品を幾つも作るというイメージがあって、前の伊羅保茶碗についても、中古市場で異なる個体を幾つも目にしています。ですから、今回の伊羅保茶碗にしても、同手の作品が他にも多く出回っているのではないかと推測しています。
シルエットは割りと直線的に整えられた椀形で、口は開き気味です。胴の上半分には轆轤目を残し、下半分は削って整形しています。釉薬は少なめ、且つ不規則にかけられ、それが整えられたシルエットと良い対称となっています。規則性と不規則性のこういう組み合わせ方も美しいと思います。
手にした感触は確かに「いらいら」しています。陶土に混ざった砂粒がチクチクと手を刺激して来るのです。また、小川欣二の他の作品と同様に、見た目以上に硬質感のある手触りです。
つづく
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