塚本治彦-1 黄瀬戸茶碗 正面

塚本治彦01_01

 土岐の陶芸家・塚本治彦(1959-)の黄瀬戸茶碗です。写真では、高台脇の掻き銘を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。

 ネット上で塚本治彦の作品を検索すると、織部の作品が最も多く、次いで志野がヒットし、黄瀬戸の作品は極少数のようです。織部の作品を見ると、一般的な織部の文法には沿っておらず、かなり大胆な造形と釉掛けを行っています。特に造形に於いては箆削りを多用し、まるで山中の岩石に緑のコケが生したような作品が多く見られます。そういう作品は私の嗜好に良く合います。

 今回の黄瀬戸に於いても、一般的な黄瀬戸の文法には沿わず、とても大胆な造形になっています。横に走る線は、多分轆轤目ではなく、リボン状に伸ばした陶土をコイルスプリングのように巻き上げて整形した跡と思われ、そういう作り方の黄瀬戸は個人的に初めて見ます。全体としては硬質な雰囲気の半筒のシルエットで、正面の胴から腰にかけて「人」の字を逆さまにしたような線彫りが入っています。

 基本的な釉薬は黄瀬戸らしい色合いなのですが、胴にある横線の段になった所に緑がかった釉薬が溜っています。この緑色は黄瀬戸特有のタンパンではなさそうで、灰がかかって緑色に発色した自然釉のように見えます。

 本当に個性的な黄瀬戸です。

つづく

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