


二十歩文雄の鼡志埜茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。
志野釉の厚みに多少の違いはありますが、どの面も正面と同じような景色です。角々段々とした造形に、鼡志野らしい釉景がかぶさっています。また、腰に残った施釉時の指跡が景色に動きを与えています。
この段々とした造形は、段が螺旋状に上がって行っているので、リボン状の陶土を巻き上げて作られたものと思われますが、その巻き上げの始点が左右側面の腰の部分にあります。左右の二か所に始点があるという事で、この螺旋状の段々は、実は二重螺旋構造になっているのです。
この構造に気付いた時には、流石にちょっと驚きました。パッと見では分からない複雑な形だった訳です。
角々段々とした側面形状とは対照的に、口縁部は曲線的に大きく波打っています。抹茶茶碗ではお約束の「五山」の形になっている訳ではなく、かなり不規則な波打ち方です。ここの造形も、不規則性による美しさを醸し出す一つの要素です。
つづく
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