
お福茶碗の裏からの景色です。まるで型で抜いたように整った高台や、高台内の綺麗な渦巻き、「与平」の窯印などが見えます。典型的な磁器の景色です。
磁器らしいこういった整った造形というのは、人による造形美の一つだとは思うのですが、私にとっては整い過ぎてて面白味に欠けます。設計図にはなかった偶然による乱れ、人智や人の作意を超えた自然の力による揺らいだ景色。そういった物を極力排除していく方向性は、それが難しかった昔は高い意義があったかと思いますが、工業化による大量生産が行われ、人による整った造形が身の周りに溢れている現代に於いては、むしろ当たり前になってしまって、鑑賞や愛玩の対象となり難くなっていると思います。
私にとっての抹茶茶碗は、鑑賞や愛玩の対象です。ですから、私は整った茶碗より、乱れや揺らぎの多い茶碗の方が好きです。この茶碗で実際に抹茶を味わった事がない理由は、こういった所にもあります。
おわり