玉置保夫-2 絵志野茶碗 正面

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 岐阜県多治見市にある玉山窯の四代目・玉置保夫(1941-)による絵志野茶碗です。同氏の茶碗を紹介するのは二つ目となります。写真では、私が気に入っている場所を正面としていますが、ここを正面とすると、掻き銘は正面の高台脇に来ます。

 この茶碗の箱書きに「絵志野茶碗」と書かれていますし、確かに茶碗正面には鉄絵が描かれているのですが、その「絵」は横に一本の線が入っているだけなので、これを「絵」と呼ぶべきかどうか多少疑問ではあります。けれども、何かを写し描いた「絵」よりも、何だか分からない模様のような「絵」の方が私の好みではありますので、この茶碗を何と呼ぶべきかについては大した問題ではないと思っています。

 乱れのある半筒のシルエットに、やや端反りの口縁。そこへ気泡や縮れのある分厚い長石釉がかかっていて、実に志野らしい美しい茶碗です。正面にある鉄絵は、乱れた横一の線で、霧に霞んだ山々の遠景のようでもあり、はたまた単なる模様のようでもあり、見る人によって解釈は色々だと思いますが、柔らかな釉景と相まって、実に味わい深い景色を作り出しています。

つづく

林亮次-7 赤志野茶碗 高台と掻き銘

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 林亮次の七つ目の茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 やや小さめの高台は、乱れのある真円で、高さは低く、高台内に兜巾はありません。高台内の彫りも浅いです。釉薬が全体にかかっており、土見せはありません。畳付きも、リューターかサンドペーパーで目跡を削り取ったのだと思われますが、そこのマットな表面が土なのか釉薬なのか良く分かりません。

 高台脇の釉景は、側面全体にも増して緋色が勝った発色なっています。この茶碗で最も重厚感のある景色です。

 掻き銘は「亮」です。釉薬の下になって殆ど潰れかけていますが、辛うじて読み取れます。林亮次の掻き銘としては最も多く見られる掻き銘です。

 という事で、林亮次の七つ目の茶碗でした。赤志野の発色の力強さとシルエットに於ける緊張感のなさが、不思議なコントラストを生んでいる面白い茶碗です。

おわり


P.S. 本年のブログ更新は今回で終了です。新年は7日から更新予定です。皆様、今年もお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。

林亮次-7 赤志野茶碗 見込み

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 林亮次の七つ目の茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見たこの茶碗は、少し乱れのある真円で、見込みの底には明確に茶溜りが整形されています。写真で見て9時半くらいの位置の口縁が最も薄くなっており、ここを飲み口にするのが快適です。ただ、そうすると、飲む前に茶碗を時計回りに90°回すと言う茶道某流派の所作とは合わなくなります。お決まりの所作を優先するか、快適にお茶を口にする事を優先するかは、各個人の自由だと思いますが、私は茶碗の造形を楽しみたい方なので、特定の所作には縛られずにいたいと思っています。

 見込みの底は、この茶碗で唯一、長石釉の白が緋色に勝っている個所です。ここは、飲み終えた後に残った抹茶の緑色が見える所なので、やはり赤が強い背景よりも、白が勝った景色の方が良いと思います。白と緑の組み合わせは、赤と緑の組み合わせよりも個人的には好きです。

つづく