猪飼祐一-2 灰釉彩茶盌 高台と掻き銘

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 猪飼祐一の二つ目の灰釉彩茶盌の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は乱れのある小さな真円で、断面は三角形になっており、畳付きに面積が殆どありません。高台内は浅めに掘られ、兜巾も比較的控えめです。

 土見せから見える陶土は、焼かれ具合によるのか赤い発色にムラがあり、飽きさせません。赤色が最も薄い三つの箇所は、焼成時に茶碗が床にくっつかないように間に挟む「トチ」の跡でしょう。また、ザクザクした表面仕上げもイイ感じです。

 掻き銘は彫りが浅くて分かり難いですが「右」と思われます。「祐」の一部です。前に紹介した一つ目の灰釉彩茶碗も同様の掻き銘でした。

 という事で猪飼祐一の二つ目の灰釉彩茶碗でした。やや人為的な部分が強めですが、青緑色の自然釉の控えめな美しさが際立つ良い茶碗です。

おわり

猪飼祐一-2 灰釉彩茶盌 見込み

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 猪飼祐一の二つ目の灰釉彩茶盌の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見るこの茶碗は、少し潰れた円形をしています。潰れていると言っても沓形と言える程ではありません。ただ、口を付ける飲み口としては、潰れて尖っている個所が快適です。写真で言えば、4時位置辺りか9時位置辺りでしょうか。

 口縁はほぼ均一ですが、微妙に厚みと角の残り具合が異なっており、口当たりが良いのは、薄く滑らかな形状になっている9時位置辺りです。

 見込みの底には何となく茶溜りが整形されていて、その中心部に自然釉の溜りが出来ています。自然釉の溜りは底の中心から少し逸れた部分にもあって、それらはこの茶碗で最も濃く青緑色が出ている部分です。この色彩が見込みを美しく飾っています。

つづく

猪飼祐一-2 灰釉彩茶盌 背面と両側面

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 猪飼祐一の二つ目の灰釉彩茶盌を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(搔き銘側)、三枚目が右側面です。

 どの面も正面と同じような景色です。乱れのある轆轤目を残した半筒のシルエットに、艶消しの白釉と薄っすらと青味がかった釉がかかっています。擦れた正方形の絵は何か所にも入っていて、見込みの中にも描かれています。ただ、外側の正方形と見込み側の正方形は繋がっておらず、それぞれが独立しています。

 猪飼祐一の作品は、某ネットオークションで常に幾つか出品されているのですが、その大半が殆ど新品と思われるような価格で、私はなかなか手を出せません。ところが稀に明らかに中古価格と思われる価格で出されている物もあって、それは新品と思われる価格より一桁安い値段で売られていたりします。狙い目はやはりそれです。そうじゃないと、効率良く何十個もお気に入りの茶碗を買い集めるなんて事は出来ません。確かにそれでは人気作家の最新作なんて物は買えませんが、最新であろうが古かろうが、茶碗の美しさは変わりません。私にとって最新作或いは新品に拘る理由は殆どないのです。

 逆に考えると、現役の陶芸作家さん達は、過去から残されて来た大量の名品が全てライバルになる訳ですから大変だと思います。同世代だけでなく、過去の作家さん達もライバルになる、つまり時代を下れば下る程、競争相手が増えて行くのです。「競う」という観点を持っている作家さんだと、そういう苦しみを味わってしまう事になります。厳しい世界です。既存の枠に囚われず、競争を避け、我が道を行く作家さんが近年増えているように見えるのは、こういう事も要因になっているのでしょう。

つづく