瀬津純司-1 彩墨流茶碗 正面

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 新年、あけましておめでとうございます。本年も引き続き、手持ちの抹茶茶碗等の紹介をしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、新年最初の茶碗は、京都の陶芸家・瀬津純司(1975-)の彩墨流茶碗(いろすみながしちゃわん)です。写真では、私が気に入っている面を正面としています。多くの茶碗で正面を決める際の目安になる掻き銘は、この茶碗では高台内にあるので、それを基準に正面を決める事は出来ませんでした。

 何年か前に瀬津純司の彩墨流作品を初めて見た時には衝撃を受けました。如何にも現代陶芸らしい大胆な造形&彩色なのですが、現代陶芸で良く感じる「やり過ぎ」感がそれ程ないのに、斬新な方法で上手く規則性と不規則性を混在させています。

 この茶碗の形は、板状の土を使って形を作る「タタラ作り」で、不規則な多角形をした半筒形になっています。彩色は、白・黒・グレーによる不規則な墨流絵になっているのですが、水平な水面上で描かれる墨流絵をどうやって茶碗という立体に写し取ったのかは分かりません。とにかく、造形に於いても彩色に於いても不規則なパターンが取り込まれ、組み合わされています。

 考えてみれば、タタラ作りにしても墨流の彩色にしても、それぞれの技法自体は新しい技法という訳ではなく、昔から存在しました。新しいとすれば、それらを組み合わせて一つの陶器に仕立てたという事と、本来は平面である墨流の彩色を立体の陶器に写し取っているという事ぐらいでしょうか。それでも、今まで感じた事のない独特の雰囲気を、この茶碗は持っています。こういう感じの規則性と不規則性の混ぜ方は、本当に初めて見ました。

つづく
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小川欣二-5 伊羅保茶碗 割ってしまった

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 前回まででご紹介していた小川欣二の五つ目の茶碗を割ってしまいました。

 ブログ記事を書き終わった後に、改めて使おうと思って取り出した際に、手元が狂って、フローリングの床に落としてしまいました。これが畳の床であったら、もしかすると割れずに済んだかも知れませんが、固いフローリングだとダメですね、写真のように見事に割れてしまいました。

 作家物の抹茶茶碗を落として割ってしまうというのは、今回が人生で初なのですが、例えば日常的に使っている食器類=工業的に量産され安価に売られている陶器を割った時とは、随分と異なる気持ちになりました。平易な言葉で表現するなら、「やっぱショックでけー!」です。(笑)

 まぁ、形ある物は最後に必ず壊れるものですし、そりゃ何十個も抹茶茶碗を持ってれば、一つくらいは割ってしまうでしょうから、こういう日がいつか来る事は分かっていたはずです。また、小川欣二の場合、同じ手の作品を幾つも作る事が多いですから、今回割ってしまった茶碗とほぼ同じ茶碗を今後中古市場で再び見つける事も出来そうな気もします。

 でも、やはりネットオークションで気に入って競り落とした茶碗でしたし、完全に自分のミスで割ってしまったので、私の心に確かにそれなりの傷が付いてしまいました。これから先、この傷と一緒に生きて行く事になります。

 この心の傷は、触るとまだチクチクしますが、何年かすれば触っても平気でいられるようになるでしょう。でも確実に傷跡は残りますから、これ以上それを増やさないために、茶碗の扱い方を今後工夫して行こうと思っています。また、今回の教訓を忘れないために、この割れた茶碗は大事に保管しておこうと思います。或いは、気が向いたら金繕いに出して修繕する日が来るかも知れません。自分で割って自分で金繕いに出した茶碗を所有するというのも、それはそれで味わい深い事だと思いますので、今回はその素材を手に入れたと考える事も出来そうです。

 ある意味、良い経験をしました。

おわり

小川欣二-5 伊羅保茶碗 高台と窯印

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 小川欣二の二つ目の伊羅保茶碗の高台と窯印です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は乱れの少ない真円で、高台内にはやや控えめな兜巾があります。全体的に釉薬がかかっているタイプではありますが、かかり方が不規則な上に薄手なので、殆ど土見せになっています。見えている陶土には砂粒が多く混ざり、イライラ・ザクザクした仕上がりがイイ感じです。また、こうして下から見ると、高台脇から胴の中程までを削って整形している様子が良く分かります。

 窯印は「欣二」です。小川欣二のいつもの窯印です。

 という事で小川欣二の二つ目の伊羅保茶碗でした。硬質で整った形に、不規則性の強い釉薬のかかり方が組み合わさった美しい茶碗だと思います。

おわり
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)楽・京