猪飼祐一-1 灰釉彩茶盌 高台と掻き銘

猪飼祐一01_06

猪飼祐一01_07

 猪飼祐一の灰釉彩茶盌の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台はやや小さめの真円です。高台内は明確に掘られており、兜巾もはっきり分かりますが、高台脇では明確な段差は削り出されていません。高台脇から突然に畳付きと高台内が現れるというような造形です。こういう高台の形に名前があるかどうかは知りませんが、他の作家さんでも時折見られる造形なので、或いは一時期流行したのかも知れません。

 土見せから見える陶土は、鉄分が少なそうな白色で、ザクザクした削り跡が良い味わいを醸し出しています。

 掻き銘は「右」だと思われます。「祐」という漢字の一部です。ただ、同氏の別の作品では「右」の上横棒が見当たらない掻き銘もあり、「右」である確証はありません。

 という事で、猪飼祐一の灰釉彩茶盌でした。陶土の白と鉄絵の黒、そして灰釉の薄い青緑色が美しく混ざり合った彩り豊かな茶碗です。

おわり
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)楽・京

猪飼祐一-1 灰釉彩茶盌 見込み

猪飼祐一01_05

 猪飼祐一の灰釉彩茶盌の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見た形は、少し歪みのある真円です。特に9時位置くらいの口縁は外側に広がっていて、ここを飲み口にすると快適です。ただ、そこを飲み口にするという事は、飲む前に茶碗を反時計回りに90°回転させるという事になり、それは時計回りに90°回転させる茶道某流派の作法と真逆になります。これを茶碗の不具合と考えるか、作法の不具合と考えるかは人それぞれでしょう。私は「茶道具」を「茶の道具」と考え、「茶道の具」とは考えていないので、特定の作法には縛られずに、最も快適な飲み口を選びたいと思っています。

 見込みの中には鉄絵で斑点状の模様が入っていて、この写真では分かり難いですが、模様は見込みの背面側に集中しています。そこは正面から見込みを覗いて行った時に最初に目に入る所です。その部分に目を引く絵や模様を入れるのは色絵磁器と同じ手法で、ここでも鉄絵の場所が完全にコントロールされている様子が窺えます。

 その他、茶溜りは適度な大きさと深さを備え、貫入が適度に入った釉景が味わい深いです。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)楽・京

猪飼祐一-1 灰釉彩茶盌 背面と両側面

猪飼祐一01_02

猪飼祐一01_03

猪飼祐一01_04

 猪飼祐一の灰釉彩茶盌を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。

 背面には、正面と対になる小さな鉄絵が入っています。そして、左右の側面には鉄絵は殆ど入っていません。こういう絵の入れ方は色絵磁器とかと同じで、一瞬作為がないように見えるこれらの鉄絵が、実は完全にコントロールされた配置になっている事が分かります。

 左側面では小さな鉄絵模様が入っており、逆の右側面では釉薬のかかっていない部分が胴の辺りに見えます。全体的に同じような釉景ではありますが、各面に微妙な個性の差が付けられていて、見ていて飽きません。非常に上手い作りです。

 ところで「茶盌」という表記なのですが、この茶碗の箱書きに「茶盌」とありますので、ここではそのように表記していますが、この「盌」という文字はPC上では環境依存文字になるので、広く情報を発信するインターネット上のブログでは余り使いたくない文字です。そういう、ある意味特殊な文字を好んで使う作家は割りといて、そこにその作家の拘りを感じるのではありますが、ネット上のブロガーである私としては、読める環境を選ぶこの文字を使うのにちょっと躊躇してしまう所があります。正直、微妙です。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)楽・京