
番浦史郎の粉引茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。
見込みの景色に於いても石爆ぜが一つのポイントになっています。また、一般的な貫入とは趣の異なる亀裂が多く走っているのも見て取れます。特に口縁の1時30分位置辺りにある亀裂は、腰の辺りまで真っ直ぐ伸びているのが分かりますが、実は外側から見ても全く同じ位置に亀裂が走っており、ここで茶碗が良く割れずに済んだものだと感心してしまいます。
こうして上から見る茶碗は、少し乱れのある真円で、口縁は石爆ぜ以外は均一、全体的に薄手に作られているのが分かります。これだけ薄手に作られていると繊細で弱々しいイメージになりがちなのですが、この茶碗では石爆ぜや亀裂が力強さを演出していて、まるで鋭利な刃物を見ているようなシャープさを感じます。個性のある見事な景色です。
つづく