
西岡小十の絵唐津(皮鯨)茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。
上から見るこの茶碗は、乱れの少ない真円形です。口縁も少々凸凹していますが、比較的均一で、薄手に作られていますから、何処に口を付けて飲んでも快適です。
見込みの中は、外側とほぼ同じような景色で、荒々しい轆轤目や大きな砂粒による凸凹が自然な不規則性による美しさを湛えています。底はなだらかな曲線で凹んでおり、茶溜りは明確ではありません。
このように人工的な規則性と自然な不規則性が見事に融合した美しさは、西岡小十の作品の中でも、特に晩年の物に強く表れています。若い頃の作品と思われる物は、もっと人工的な規則性が強く主張していて、「作り込んでやろう」という、やや肩に力が入った作風のように見えます。晩年になって力が抜け、無理に作り込まなくなったからこそ、自然な不規則性が多く入り込み、結果的に規則性と不規則性が融合した美しさが強まって行ったのでしょう。歳を重ねる毎に不規則性を取り込んだ作風に変化し、規則性と不規則性が融合した美しさを生み出す作風になっていくというのは、多くの高名な陶芸家で見られる傾向だと思います。
つづく