
西岡小十(1917-2006)の絵唐津茶碗です。西岡小十の作品は、これで四つ目です。写真では、絵の描かれている部分を正面としています。ここを正面とすると、掻き銘は背面側に来ます。
やっぱり唐津の中では、西岡小十の特に晩年の作品が、私は一番好きです。そこでは特段狙っていないような自然な乱れの残し方があり、それが大変に美しいと思います。この茶碗に於いても、不規則な轆轤目の残った椀形のシルエットに、一部が縮れた釉薬がかかり、所々には黒い斑点や石爆ぜがあったりします。それらが実に自然に景色の中に存在し、人工と自然、規則性と不規則性、意識と無意識といった要素の混ざり合う所に生まれる美しさがあります。これは所謂「1/fゆらぎ」と呼ばれる美しさの一つなのではないかと思っています。
正面の絵は草文だと思いますが、こういう一瞬何だか分からないような、ササッと簡単に描かれた絵でありながら、絶妙なバランスの良さがあり、この辺には作者の熟練が垣間見えます。
余り手をかけずにパッと作ったように見えて、シルエットや景色に於いて絶妙のバランスが取れている大変に美しい茶碗です。
つづく