西岡小十-4 絵唐津茶碗 正面

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 西岡小十(1917-2006)の絵唐津茶碗です。西岡小十の作品は、これで四つ目です。写真では、絵の描かれている部分を正面としています。ここを正面とすると、掻き銘は背面側に来ます。

 やっぱり唐津の中では、西岡小十の特に晩年の作品が、私は一番好きです。そこでは特段狙っていないような自然な乱れの残し方があり、それが大変に美しいと思います。この茶碗に於いても、不規則な轆轤目の残った椀形のシルエットに、一部が縮れた釉薬がかかり、所々には黒い斑点や石爆ぜがあったりします。それらが実に自然に景色の中に存在し、人工と自然、規則性と不規則性、意識と無意識といった要素の混ざり合う所に生まれる美しさがあります。これは所謂「1/fゆらぎ」と呼ばれる美しさの一つなのではないかと思っています。

 正面の絵は草文だと思いますが、こういう一瞬何だか分からないような、ササッと簡単に描かれた絵でありながら、絶妙なバランスの良さがあり、この辺には作者の熟練が垣間見えます。

 余り手をかけずにパッと作ったように見えて、シルエットや景色に於いて絶妙のバランスが取れている大変に美しい茶碗です。

つづく

浜本洋好ー3 彫唐津 高台と窯印

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 浜本洋好の彫唐津の高台と窯印です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は綺麗に真円で、やや低めに作られています。高台内の彫りは浅めで、兜巾も控えめです。土見せではザラついた感じがあって良い雰囲気がありますが、畳付きは綺麗に整えられていて、やはり実用性が高くなっています。このように、下から見ても鑑賞性よりも実用性に重きが置かれた作りになっています。

 窯印は「三里」です。浜本洋好の茶碗では掻き銘で「三」と入れられるのが普通だと思いますから、より少ない手間で入れられる窯印で「三里」というパターンは、本人作ではない工房作品か、或いは沢山作って安く広く販売された半量産品か、どちらかだと思います。実際、この茶碗は鑑賞性よりも実用性が勝った造りになっていますし、中古市場での売価も安かったです。
 でも、唐津焼というのは元々実用性に重きを置いた焼物ですし、一方でこの茶碗にも手作りの味わいは十分にあります。これはこれでよろしいのではないでしょうか。

 という事で、浜本洋好の彫唐津でした。気兼ねなく実用できる良い茶碗です。

おわり
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)唐津

浜本洋好ー3 彫唐津 見込み

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 浜本洋好の彫唐津の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 外側と同様に、少し青味がかった釉薬が薄く均一にかかっています。釉薬のムラや凹凸が少なく、量産品に近いような滑らかな見込みです。鑑賞するには物足りなさがありますが、実用には向いています。

 上から見たシルエットは、ほぼ真円で、口縁も均一です。この辺りにも鑑賞性よりも実用性に重きを置いた造りが見て取れます。また、茶溜りもあるにはあるのですが、あまり明確には作られていません。実際、くっきりした茶溜りというのは、茶筅を痛めやすいのではないかと思いますので、こういう何となく作られた茶溜りの方が実用的だと思います。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)唐津