中野陶痴-5 青唐津 正面

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 佐賀県唐津市にある中野窯の四代・中野陶痴(1916-2012)の作品と思われる青唐津茶碗です。中野陶痴の茶碗は、これで五つ目です。「思われる」と表記したのは、この茶碗では窯印の類が見当たらず、四代・中野陶痴の作である事を示すものが箱書きのみであるからです。箱書きでは、蓋裏に「青唐津 陶痴造」とありますが、箱と中身が入れ替わっている可能性もあるので、箱書きだけでは確たる証拠にはなりません。ただ、上の写真ではやや白っぽく写っていますが、実際の茶碗はもう少し緑がかっていますので、これを「青唐津」と言うのは合っています。ですから箱書きと茶碗に矛盾点がなく、箱と中身は合っている可能性が高いです。
 尚、写真では茶碗正面をテキトーに決めています。向きの指針になるような目印が何もなく、どの方向から見ても同じような見た目なので、そうしています。

 これを買った当時、何か唐津の茶碗が欲しくなっていて、且つ資金がそんなになかったので、お手頃に買えるイイ感じの唐津茶碗を探していました。そこでオークションサイトに出ていたこれを見付けたのですが、中野陶痴の作品なら既に幾つか持っていて馴染みがありますし、茶碗の見た目も悪くありません。しかも、かなりのお手頃価格。それでついつい買ってしまったという次第です。ただ、実物が手元に届いて、窯印が見当たらない事に少々がっかりしました。やはり作者を示す確たる証拠がないと、ちょっと心許ない所です。

 でも、まぁ、作者が誰とかを考えなければ、そこそこ悪くない茶碗だと思います。やや大ぶりで直線的な碗形の造形に、恐らく灰混じりの釉薬による緑がかった独特の色合い、砂粒混じりの荒い表面に、乱れた轆轤目・・・。安くで入手して気楽に使い込むには十分な味わいのある茶碗だと思います。

つづく

浜本洋好ー2 斑唐津 高台と搔き銘

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 浜本洋好の斑唐津の高台と搔き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は乱れの少ない真円ですが、高台内の彫りは偏っていて、ちょっと三日月高台になっています。兜巾は低くなだらかに成型されています。

 高台脇を見ると、削り出しで毛羽立った表面になっている所と、そうでない所の境目がはっきりしていて、轆轤成型で何処まで作り込むのかが良く分かります。また、削り出した跡はザクザクに毛羽立ったまま焼固まっていますが、こういう仕上がりは土物の陶器らしくて好きです。ここを触った際の感触も好きです。

 搔き銘は三里窯の「三」なのですが、彫りが浅くて分かり難いです。現物を手に取って眺めても、一瞬探さないと見つかりません。控えめな搔き銘です。

 という事で、浜本洋好の斑唐津茶碗でした。一瞬整っているように見えて、良く見ると自然な乱れが意外に含まれていて、そこに美しさがある良い茶碗です。

おわり

浜本洋好ー2 斑唐津 見込み

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 浜本洋好の斑唐津の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 ここへ来て、やっと鉄分による黒い斑点が一つだけ出て来ました。(笑) この斑点と、釉薬が薄くなって陶土が透けて見える一箇所が、この茶碗の見込みの見所です。

 また、浜本洋好の斑唐津に特有と言われる青みは、この見込みが一番出ているでしょうか。ただ、近年の同氏の斑唐津作品に比べると、釉薬が厚く青みは弱いので、この茶碗は同氏が比較的若い頃に製作した物だと思います。まあ、中古で市場に出てきた茶碗なので、その点から考えても、そんなに近年の作品でない事は確かでしょう。

 上から見るこの茶碗の姿は、微かに歪みがありますが、ほぼ真円です。口縁もほぼ均一に薄手で、どこに口を付けて飲んでも問題はなさそうです。唐津焼は実用色が強い焼物なので、整わない乱れた要素というのが少ないものですが、この茶碗もそういう風になっています。ただ手作り品であるだけに、乱れた要素が全くない訳ではなく、その要素の残し具合に各作家さんの個性が出るような気がします。例えば、晩年の西岡小十は乱れた要素を強く残す作風でしたし、浜本洋好も唐津焼の中では比較的乱れた要素を多く残す方だと思います。私は、そういう作風が大好きです。

つづく