
伊賀の谷本洋(1958-)による伊賀茶碗です。写真では、大胆に三本の彫りが入れられている個所を正面としています。ここを正面とすると、高台脇の掻き銘は向かって左奥の辺りに来ます。
基本的には陶器が好きな私ですが、備前や信楽等の炻器・焼締めの茶碗も一応は持っておきたいという思いもあります。それで、彼の古田織部が云々したと言われる「古伊賀耳付水指 銘『破袋』」のように美しい伊賀焼の茶碗を探していました。ところが、最近の中古市場に出回っている伊賀焼の茶碗は、意外に形が整っている物が多く、「破袋」のような自然に形が崩れた美しさを持つ茶碗にはなかなか巡り合いませんでした。そうした中で見つけたのが、この谷本洋の伊賀茶碗です。
この茶碗の場合、「破袋」のように窯の中で自然に形が崩れたという訳ではなく、人為的に不規則で乱れのある造形に仕上げられているのですが、それでも不規則性が混ざる事によって生まれる美しさを上手く取り込んでいます。また、窯の中で灰がかかる事によって生じる自然釉も、作為のない自然な美しさを湛えています。こうした不規則性が生む美しさがあってこその伊賀焼だと私は思っているので、頑張ってオークションに入札し購入しました。
つづく