山本雄一-2 緋襷茶碗 見込み

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 山本雄一の緋襷茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 見込みの中では、緋襷は大きく一箇所に入れられているだけです。ただしその場所は、茶碗正面を自分に向けて茶碗を傾けていった際に、真っ直ぐ目に入ってくる背面側の内側です。見込みを見ようとした時に最初に見える場所に緋襷を入れている訳です。緋襷を見せるために完全に計画的に仕組まれた景色です。
 こういう計画性は、作者の緻密な配慮として賞賛されるのが一般的ですが、人為的或いは不自然な作為として疎まれる場合もあるでしょう。計画的な作為が見えるのを好むか嫌うかは、その器を使う人の嗜好次第です。
 ・・・この辺、私は人の計画性と自然の偶然性が混ざり合う景色が好きなので、ある意味ニュートラルではあるのですが、この茶碗に関して言えば、少し作為が見え過ぎているように感じています。

 この茶碗を上から見たフォルムは完全な真円で、乱れはありません。口縁部も均一です。
 底の茶溜は、有るのか無いのか良く分からない程度にしか成形されておらず、また、見込み全体に側面と同じような細かい筋目模様が見られます。
 緋襷が入っている部分以外の場所は、やはり側面と同じく素焼きのような色合いで、これで良くお茶が浸み込んで行かないものだなと、不思議な感覚になります。

 う~ん、やっぱりちょっと整い過ぎてて実用色が強く、退屈な景色かなぁ。備前焼って、全般的にこういう感じではあるけれども・・・。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)炻器

山本雄一-2 緋襷茶碗 背面と側面

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 山本雄一の緋襷茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。

 まぁ、どの方向から見ても同じような景色の茶碗です。フォルムがカチッとしていて乱れがないだけに、余計にそうなります。ですから、とにかく緋襷の文様にだけ目が行きます。

 緋襷にばかり目が行く所を、頑張って他の所に着目すると、地の部分に非常に細かい筋目模様の凹凸が横に走っているのが分かります。これだけ細かい筋目だと、轆轤目でもなさそうですし、成形時の指紋が横に走った跡とか、やはり成形時に陶土の砂粒が引き摺られて出来た跡とか、そういう感じのものに見えます。こういうテクスチャーは、釉薬がかけられる一般的な陶器だと見られませんし、釉薬を使わない炻器の類でも、あまり見慣れない文様です。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)炻器

山本雄一-2 緋襷茶碗 正面

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 備前焼の山本雄一(1935-)の緋襷茶碗です。写真では、向かって左90°の位置に掻き銘を持って来て、この向きを正面としています。

 備前焼の一種である緋襷は、独特の見た目をしています。陶器を焼き締める際に、器どうしのくっつきを防ぐために間に藁を入れたのが緋襷の始まりだそうで、藁のアルカリ成分が陶土に含まれる鉄分と反応し赤く襷状に発色しています。また、その赤い発色を強調するため、地の部分は茶色い焼色が出ないような焼き方をされる場合が多く、更に自然釉を含めて施釉は殆どされません。で、結果的に、生焼けか素焼きかと思うような地に、オレンジの線模様が入るという、非常に個性的な外観になります。

 この製作途中の素焼きのような地の仕上がりには、私も最初はちょっと抵抗があって、自分でも所有してみようかと思うまでには少し時間がかかりました。でも見慣れてしまうと、これはこれで個性的で悪くないなと思うようになりました。

 この山本雄一の緋襷は、乱れの殆どないカチッとしたフォルムに、緋襷が主に斜め方向にランダムに入っています。ですから、フォルムに面白味がない分だけ、緋襷の美しさに心を集中できる器になっています。フォルムに乱れが少ないのは、備前焼全般の傾向ですから、そういう意味では備前焼の性格は緋襷の美しさを楽しむのに向いているとも言えるかも知れません。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)炻器