山本雄一-1 備前茶碗 高台と掻き銘

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 山本雄一作・備前茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上に持って来ています。

 高台の成形や高台脇と高台内の削りなどは、非常にカッチリと行われていて、多少の凹凸はあるものの、概ね乱れの少ない綺麗な形です。また、兜巾は控え目です。やはりここでも形状的には、あまり楽しくありません。

 形は面白くありませんが、表面の色調や陶土の「す」といった所に自然で不規則な乱れがあって、その辺がここの景色の面白味になっています。こういう色調は、適度に枯れた雰囲気を醸し出していて、なかなか良いと思います。

 掻き銘は「マ|」です。山本雄一の父であり備前焼の人間国宝である山本陶秀(1906-1994)の掻き銘が「マ」でしたから、それに「|」を加えた格好です。この「|」が、何を意味しているのか良く分からないのですが、雄一の「一」=「1」なのではないかと勝手に解釈しています。また、山本雄一の長男・竜一(1964-)も同じ窯で作陶しているのですが、その掻き銘は「竜」だったりします。どうせだったら「マ||」とか「|マ」とか「マ竜」とかにしてれば面白かったのにと密かに思っていたりします。(笑)

 という事で、山本雄一の備前茶碗でした。オーソドックスな備前らしい茶碗です。

おわり
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山本雄一-1 備前茶碗 見込み

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 山本雄一作・備前茶碗の見込みです。写真では茶碗正面を下に持って来ています。

 上から見た茶碗のフォルムは真円で、口縁も均一に整形されています。乱れは殆どありません。底面はなだらかに湾曲し、茶溜は特段成形されていません。ですから、この方向から見ても形状的な面白味はありません。面白味は、陶土のナチュラルなテクスチャーという事になるでしょうか。

 見込みの底は、陶土の色がほぼそのままで、まるで素焼きのままのような色合いです。自然釉も掛かっておらず、目は細かいですがザラザラした底面です。ザラザラした底面というのは、茶筅を傷めやすいという事で嫌う人がいて、同じ炻器の信楽焼とかでは、底にわざと自然釉が掛かるようにして、ガラス質のツルツルした底面に仕上げる事もあります。ですが、この茶碗くらい目の細かいザラザラであれば、実際に茶筅は殆ど傷みません。見た目の好みの問題もありますが、これはこれで悪くないと思います。

つづく
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山本雄一-1 備前茶碗 背面と両側面

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 山本雄一の備前茶碗を各方向から写しました。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側(掻き銘側)、下の写真が右側です。

 茶碗の左側面が良く焦げていて、右側面がそれ程でもない焦げ具合になっています。「焦げ」と言っても、所謂「焦げ」≒炭化したのではなく、陶土に含まれる鉄分が窯の中の炎によって酸化して赤黒くなる訳です。その炎の状態は窯の中で均一ではないので、器の表面の酸化の仕方も不規則に異なってきます。その偶然の変化が、器の景色になります。
 この茶碗は、フォルムとしては乱れが少なく、また自然釉もかかっていないため、その部分での面白味に欠けます。ですから最大の見所は、場所によって異なる焼け具合という事になろうかと思います。典型的な備前焼らしい景色だと思います。

 備前焼というのは炻器・焼き締めですから、釉薬無しでも水が浸透しないほど硬く焼き上げられています。磁器と同じです。このため、器としての熱の伝導性が良くなり、保温性が下がります。茶の湯の世界では良く「一楽二萩三唐津」と言いますが、この格付け順番は器の焼き締りの甘い順になっています。多分、長い茶道の歴史の中で、茶人たちが経験的に保温性の高い器を評価してきた結果なのだと思います。ですから、硬く焼き締められて保温性が高くない備前焼は、その渋い姿と長い歴史があるにも関わらず、この格付け上位三つに入って来ないのでしょう。

つづく
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