加藤土代久ー3 青紫野茶碗 正面

加藤土代久03_01
 新年あけましておめでとうございます。今年も手持ちの抹茶茶碗の紹介を続けて行きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今年最初の茶碗は、美濃の陶芸家・加藤土代久(1962-)の青紫野茶碗です。加藤土代久の作品は三つ目となります。写真では、メインの絵のような雰囲気のある部分を正面としています。ここを正面とすると、高台脇の掻き銘は背面側に来ます。

 加藤土代久は2004年の改名前は実名の「加藤豊久」(読みは同じ)と名乗っていて、その時代の作品はこれまでに二つ記事にしています。ですから、今回の茶碗は同氏の三つ目の作品ということで、名前は変わっていますが、通し番号は「3」にしました。「土代久」になってからの作品としては初めてです。
 因みに、この茶碗に同梱されている栞には、平成16年(2004)の記載までありますから、この茶碗はそれ以降の数年の内に製作されたものと思われます。2004年は改名をした年ですから、この茶碗は改名直後の作品という事になります。改名に伴って大いに気持ちの入った時期だったでしょうから、この作品にもかなりの意欲が込められているのでしょう。

 この茶碗は共箱に「青紫野 茶碗」と書かれています。多分、「青紫色の志野」茶碗という意味で、「紫」と「志」をひっかけて「あおしの」茶碗としているのでしょう。青や紫に発色させた志野焼作品は、人気作家の林正太郎も得意としていて、林正太郎に師事した加藤土代久もまた同じ方向性にチャレンジしたのだと思います。実際、林正太郎の作品群と加藤土代久の作品群をネット上で検索して見比べると、釉薬の使い方や造形が非常に良く似ています。林正太郎の作品は人気が高く、中古市場でもかなりの価格が付き、なかなかホイホイとは買えません。その点、加藤土代久の作品であれば、そこまで高額ではないので、近い味わいの良作がリーズナブルに購入できます。

 さて、今回の「青紫野茶碗」ですが、一般的な志野とは随分と違った雰囲気に仕上がっています。色が緋色系統ではなく、青~紫という寒色系になっているのもさる事ながら、釉薬が全体的に綺麗に溶けて、釉薬の凹凸や気泡の穴が殆どないというのも、志野では大変に珍しいと思います。

 手びねりで造形したような凹凸のある半筒のシルエットに、縦に大きく箆を入れた削り跡があります。正面は白地に鬼板による茶色の線が入り、それが絵のような装飾になっています。非常に美しい茶碗です。

つづく
posted by 笹九百家 at 12:00Comment(0)志野

鈴木五郎-1 織部茶碗 高台と掻き銘

鈴木五郎01_06

鈴木五郎01_07

 鈴木五郎の織部茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は乱れのある真円で、直径はやや小さいでしょうか。高台内の掘りは浅く、兜巾はありません。全体の左半分に、白釉が流れて溜った跡があり、整え過ぎない高台脇表面の仕上げと相まって、独特な景色を作り出しています。

 陶土は鉄分の少ない百草土だと思われますが、ザクザクしたラフな雰囲気が味わい深いです。

 掻き銘は「五」だと思われます。以前に河本五郎の掻き銘も掲載しましたが、それも「五」でした。しかも、どちらも草書体ベースの掻き銘で、ちょっと形が似ています。このため、うろ覚えの私は、掻き銘だけを見ると、「鈴木」の五郎さんなのか、「河本」の五郎さんなのか分からなくなってしまいます。(笑)

 という事で、鈴木五郎の織部茶碗でした。典型的な織部かと思いきや、そこかしこでお約束から外した造りが大変に面白い茶碗です。既存のルールから離れて自由に創造するというのが、元々の織部が持っている精神性ではないかと私は思っているので、こういう織部が私は好きです。

おわり


P.S. 今年のブログ更新は今回で終了です。また、新年最初の更新は五日を予定しています。皆様、今年も大変お世話になりました。どうぞ良いお年をお迎え下さい。m(__)m

鈴木五郎-1 織部茶碗 見込み

鈴木五郎01_05

 鈴木五郎の織部茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 この茶碗を上から見ると、何となく五角形に近い乱れのある真円となっています。口縁は、やや分厚く、3時位置から4時位置辺りで傾斜が付けられています。ですから、そこを飲み口にするのが良いですが、その位置は茶碗を時計回りに90°回してから口を付ける茶道某流派の作法に合っています。

 見込みの底には細かい凸凹があり、茶溜りは不明確です。こういう少しラフな仕上げなので、真っ白な色でも退屈しない景色になっています。3時位置辺りにある緑釉の溜りも良い味わいです。

つづく