西岡小十-5 絵唐津茶碗 正面

西岡小十05_01

 西岡小十(1917-2006)の絵唐津茶碗です。西岡小十の作品は、これで五つ目です。写真では、口縁の黒い着色が最も太くなっている部分を正面としています。ここを正面とすると、掻き銘は背面側に来ます。

 絵と言えるような物はなく、口縁部分だけが黒く着色されているので、これは一般的に「皮鯨」と呼ばれる茶碗です。西岡小十の作品の場合、こうした皮鯨茶碗を「唐津皮鯨茶碗」と箱書きするパターンと、皮鯨でありながら「絵唐津」を箱書きするパターンの両方があるようで、中古市場では両方のパターンが見られます。一般的な「絵唐津」でも「皮鯨」でも、線画にするか口縁の縁取りにするかが違うだけで、手法的には同じ物なので、皮鯨を絵唐津の一つとして考える事が出来ます。ですから、「絵唐津茶碗」と書かれた箱に「皮鯨茶碗」が入っていても、間違っているとは言えません。多分、製作した時の気分とか、そういうあやふやな要素が働いて、箱書きが書かれているのでしょう。

 この茶碗は、かなり晩年の作品だと思われ、荒々しい轆轤目が残され、大きな砂粒が爆ぜかけたような部分が幾つもあって、整えられていない不規則性が強く表れています。それでいて絶妙なバランスで整形されていて、全体としては均整の取れたシルエットをしています。人工的な規則性と自然な不規則性が見事に融合した美しい茶碗です。

つづく

加藤土代久ー3 青紫野茶碗 高台と掻き銘

加藤土代久03_06

加藤土代久03_07

 加藤土代久の青紫野茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は乱れのある真円で、高台内もラフではありますが、兜巾はちゃんと整形されています。土見せから見える陶土は、やや鉄分が多めの百草土のようで、少し茶色です。また、ザクザクした表面仕上げが良い雰囲気です。

 掻き銘は「と」なのですが、「豊久」時代の「と」に比べると、少し「よ」に寄せた掻き方になっています。改名して掻き銘も変えたいのだけど、大きく変えてしまうと同一人物の作品として如何なものか・・・、というような心理が働いた結果として、少し変化した掻き銘にしたのではないでしょうか。・・・う~ん、私、ちょっと考え過ぎかも。(笑)

 ということで、加藤土代久の青紫野茶碗でした。一般的な志野焼から大きく踏み出した意欲的な良作だと思います。

おわり

加藤土代久ー3 青紫野茶碗 見込み

加藤土代久03_05

 加藤土代久の青紫野茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見るこの茶碗は基本的に真円ですが、乱れが強く、ちょっとおむすび型に見えなくもないです。口縁は志野にしては薄く、特に12時位置と4時位置辺りが外側に向かって少し傾斜しているので、そこを飲み口にすると快適です。また、口縁部は強く鉄分が滲み出ていて、黒に近い焦げ茶色の発色になっています。

 見込みは全体に青色に発色しており、気泡は殆どなく、釉調はフラットです。また、見込みの底には明確に茶溜りが整形されています。

 見込みの中の景色に動きがなく、比較的退屈ではあるのですが、口縁の乱れのある造形によって、上から見る景色全体としては味わい深くなっていると思います。

つづく